本プログラムについて ―ニコラス・ナモラーゼ
“Influence(影響)”と題した今回のプログラムでは、前半ではスクリャービン、後半ではJ.S.バッハを軸に据え、それぞれの後には彼らに影響を受けた作曲家の作品を演奏致します。
前半はスクリャービンの作品の中でも、とりわけピアニスティックな技術とリズムの複雑さを追求した、精緻で実験的な作品を取り上げます。こうした彼のピアノにおける質感や響きに対する画期的なアプローチに強く啓発された自作の「練習曲 I~XI」が続きます。
後半は、J.S.バッハの「フランス組曲」の中から、厳粛な『第1番』 と快活で煌くような『第5番』、そしてバロック音楽とロマン派音楽を繋げる役割としてブゾーニ編曲によるJ.S.バッハ「コラール前奏曲
われ汝によばわる、主イエス・キリストよ」を据え、リストの「死の舞踏」で締めくくります。この陰鬱な作品では、構成や対位法という点において、伝統的で古風ともいえる方法が用いられており、音楽史上最も革新的とされるリストでさえも、バッハなどの過去の偉大な作曲家たちに大きな影響を受けていることを示しているのです。
訳:アイエムシーミュージック